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生きてえのだ

花と虫と海、それとさんぽが好き。



目次  

通過儀礼として

 誰かに「詩」と呼ばれるまで、わたしは詩を名乗らないと決めていた。自ら名乗ることは容易だ。だがひとは、何と呼ぶのか。

 数字とリズムの佇まいを生かす。好きな響きがある。それらを崩すこともまた、生き方のヒントとなる。わたしはまるい。真円である。ゆえにじぶんのことを描くしかない。見てきたものを憶え、時には行方知れずになった感情を追いかけてゆく。

 「おはよう」とは言えるのに「さよなら」が言えない。そのくせ不用意なことばを鉈のようにふるう。誰しも晒しを巻いて包丁を仕込んでいる。まいにち刺し違える覚悟を求められている。

 ホールにならぶ椅子の背もたれが、目の奥を押し潰そうとする。白いメッシュの模様に目がくらむ。おまえは野生動物かと言われた。本能など壊れてはいない証拠だ。

 誰もあんたのことなど気にしてないと言う。聴覚過敏のはずがロックを聴くじゃない、と言われる。彼らは悲しいかな、物差しは人それぞれということを理解していない。そしてわたしは「物差しは人それぞれ」という物差しでしか考えていない。

 せいかつとは海のようだ。何度もなんども飲み込まれた。そもそも溺れていることに気がつかないことが問題だった。

 「詩」と呼ばれたのは四か月後だ。前触れは無かった。

 どこまでも隔絶しているのだ。しかしこの、寄り添う余地こそを欲していた。これを糸口に、きょうも朝起きてから、儀式めいた暮らしに追われている。

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orionhanako.hateblo.jp

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