生きてえのだ

花と虫と海、それとさんぽが好き。



目次  

瓶底めがね

玄関先に落ちた 保険証券 顔も合わせず 契約は更改 身内なのに誠意が無い 二年前と吐く台詞は同じ 二十七はとうに越えた クラブ入りとは儚い夢だ くたばるどころか むしろ安寧 まだ 道半ば 歯がない 電話がない あれこれ無い モノねだりに疲れた すでに道半…

コンプレス

ひまわりのまる焼きが うなだれていた うたをしたためる こがねむしの光沢 複雑なクラスタ 数珠に つなげた構造は 原初より配列を リズミカルに引き継ぐ ポリリズムはふたたび 重なる理にあり たとえ無策に見えても 夕方 相見えるでしょう そんなお迎え予報…

レイドバック

夕焼け小焼けの ヴァガボンド 遠い あこがれ ポーランド いななきは いつも 風のよう 鼾のように ねえあ ねえあ あねね あねね と ちり紙ロールをふり回す 暗い日の入り 帰り道 お澄ましをする ポートレイトも 茶色の花束も むぞうさな閉塞に沈まぬよう 欹て…

ぬくもり

日陰のすき間に 流される 青信号が点滅していく 風下に溶けだす 左手がしきりに 瞼をむずがる 水嵩が腰を上げ 水面はさめ肌に たれ込める枝舌は艶やかに シェリルの歌声はいつでも たおやかなハグであり それは 降り止まないものだった 当たり前のように わ…

顫音

産まれて 初めて 呼ばれた おそらく これが ほんとうの名前 父も 母も 知らなかった だれも かれも 悪くはないのだ 変わらない 変えられない ほんとうに申し訳ない 過去は振りきれない 悔恨は今さら 拭えない ならば丸飲みにして 味わえ そんなことは 君 馬…

青いゆびさき

道ばたに散らばった蝉は 踏まれていま 泣きだした 光を浴びて 風を感じる ただそれだけのことが 贅沢でもあり 大切でもある 雨のぬくもりは 知っているつもり でもすまない 頭の膜が閉じるのだ 崩れた膝が疼くのだ 悪く言わないでおくれ ただの事実なの だか…

お知らせ

二点お知らせいたします。 ①ハンドルネームが「オライオン、花子」から「青那 実沙紀」に変わります。 「オライオン、花子」は良くも悪くもインパクトがあって好きなのですが、よりさまざまなスタイルに適応できるよう、より本名に近く、むしろほぼ本名であ…

会話のテンポが合わない話

同意することは簡単ですが、否定はなぜ否定するのか話さなくてはいけません。否定する根拠を考えていると返事が曖昧になり、その間に肯定の意にとられて話が進んでいくことがよくあります。 やがて実情とかけ離れてしまい、しかしそれを説明するに必要な時間…

雨傘

すれ違いざま 生きた と この目を見て 生きた と 死にたいではなく 死んでしまえでもなく たった一言 生きた と ただそこに 生きた と 弾かれてゆく 長雨の da capo Origa - 川よ、私の川よ

立身

脂っこい鮭の切り身に 海苔と納豆 好きではないのに 毎日毎日 食っている 読書は四冊つまみ食い 二行読んではすぐ戻る 聞こえる単語が横すべり 三人寄れば黙り込む 潜らない思考 埋まらない齟齬 先の見えない治療に 不毛とも言えない 腕をふれ 足をさせ 目頭…

トゥーツ・シールマンスよ、忘れるか

Toots Thielemans - Bluesette ハーモニカ奏者のトゥーツ・シールマンス氏が二十二日、亡くなった。私は彼の作曲した『Bluesette (ブルーゼット)』という曲がとても好きだ。この曲はスタンダードとして彼自身による演奏だけでなく歌詞も添えられ、Sarah Vaug…

荒天

あずさ あさぎり でんしゃが好き くるま ボール お歌が好き ドラえもんが好き トーマスが好き わんわんはもちろん アンパンマンだって好き みんな大好き しまじろう ダイヤブロック お人形も好き 塗り絵が好き いたずらが好き そしてなにより ママのお迎えが…

享受

でもまあ体壊すたぐいのやつは 悔やむよ、いずれ 心にも裂け目が できるよ 歳を食えばたいがい 障害者よ 金なんか年中 むしられちゃうのさ 死別、生き別れ しょっちゅうだよ お涙ちょうだいは そろばん勘定になるよ 頭をぶつけて 視野欠損に気づき 無自覚な…

ひりひり

ちっか ちっか たちこ ちっか ちっか たちこ ちっか たちこん 銅メダルがこじあけた こころ

どこか嬌声

落陽をなじる瓦屋根 メガネの縁には黒い種 歩けるようになって半年ぐらいか 気前よく変わる街並みに 浮いて浮かんで、消える アポクリン腺を開きませんか てんであきらめやしない おでこの張った男よ 誰ぞある 吐く息もなまぐさい 顔を肩からぶる下げ 追いつ…

どぼんの花、遠浅の記憶

どぼんの花 なまりの花弁したたり ちりぢり落つる 墨の河 千鳥足 嵩む格子に 胸をふさぐ 遠浅の記憶 廃屋と踏み切りの先 斎場を抜ける道に たたずむ 黒猫のえさ場に迷う 折れた歯は川に放った 一斉に羽虫が嗤う 化粧は より空虚になった 舌でねぶると 芯子が…

へのへのもへじ

ちかちか瞬く あたまの輪っか 近ごろようやく 風を招いた ぬめりをなぞる しかくい湿地 沼が 大きな 口 を開ける 日が暮れると 木の実を砕く 打ち損じては ゆびさき挫く ひょっとして 聞こえますか 沈む あぶくの囁きが 水面に映える つむぎは大島 肉は 小さ…

スマホが太った話

スマートフォンが太っていました。 自覚したのは春ごろでした。 電池パックが膨張して背面が浮いています。 妊娠という言い方もあるそうですが あまり好きではありません。 そしてとうとう 後光まで差し始めたではありませんか。 表の液晶も浮き出して光が漏…

ひとでなし

浮き輪と回る少女に 流れ着いた欲望 鉄柵のこちら側 作業では差し歯も渇いた 今日なら吞んでも 同情されるか あいつが死んで 真っ先に浮かんだ これが病 といえば 許されるのか 本心 ならば誰が 愛してくれようか 雲のひだがせわしく ひるがえる こら、涙 お…

ツギハギ

まち針を 打って打っては 縫い続け 縫って縫っては 打ち返す くる日も くる日も 夜なべして いよいよ肩も凝ってゆく こころってやつは等しく 体液にまみれ 触れたことはないが これみよがしの拍動 縫い目の向こう 今だって、 こちらを窺う だからやはり 縫わ…

圧迫の舌

にがい耳を舐めて、生き延びると誓い しおりを挟んで飛び出した世界 この生涯に買い手はつくか その辺にもよくいるやつだ 袋小路の色使いに だれが強え、やべえとか マーキングだらけの街中において くすりを見直し、脳内整理 爪の垢まで力がみなぎる つかさ…

ことばの音楽

リズムとメロディ 会話のハーモニー なんてこった、 いっとう苦手なやつだ! Grant Green - Jan Jan (Fabulous Counts cover) (1972)

喃語ひびく

湿気の回らない換気扇に ひたいの汗も 玉とこぼれた もぞもぞと座ったまま たらふく太った 湿り気を抜く 手つなぎをがまんする代わり この髪の毛を弄って紛らわす 陽気が馴染んで 夢中で 走って 跳んで 手を振れば のども渇くというもの 突如 離陸体制に入っ…

祭囃子

てんつく てんつく ぴいひゃらり でんでん つくつく ぴいひゃらり ゆかた じんべい 昼花火 はっぴ 着流し つゆ払い ぱぱまま はな緒 赤ら顔 みこし 入れ墨 担ぎだこ 天突く 天突く ぴいひゃらり どんどん 突け突け ぴいひゃらり わた菓子 焼きめし 吹きもど…

赤毛のかの女 左

「あたしは」 だれとも喋れなかった 授業中はいつも視線に怯える 当てられるのが怖くて 教科書は持たずに通っていた 途中で逃げ出すと 体育館のピアノに拾われる 先生に頼まれた伴奏は断りきれなかった なのに練習には一度も行けなくて せめて歌声は聴かなき…

赤毛のかの女 右

「彼女は」 だれとも喋らなかった 授業中はいつも寝ている 当てられるといつも 教科書を忘れたと言っていた 途中で出て行くと 体育館でピアノが鳴り始める 担任は彼女に合唱コンクールを任せた なのに練習には一度も来なくて そのうえ当日はというと 舞台を…

きぐるみ

中身をこっそり 覗き込む 肩口の歯形に ファスナーを探す 腹にチャックを付けてみる 中身とひっそり 手をつなぐ お金の数え方は 息をころして覚えた 中身が ねごとを言う明け方 上玉だ あばずれだ なんて阿漕な響きだ 知らない名刺 だれかの保険証 チャック…

もう一度雨戸を開けたかった話

さてちょろっと触れていましたが、私の家は五年間、開かずの雨戸でした。 それがようやく、先月開けることができた、とご報告できましたが、やはり一回きりでその後真っ暗なのです。何が問題なのかといえば、覗かれるのが怖いんですね。向かいの家の風呂場の…

不可逆の讃歌

もうさ どれにしようかな ができないわけ この先 歩道がなくなります この先 通り抜けできません そんな理由で引き返せないわけ でもさ あたしがやらなきゃ 誰もやらないわけ 申し訳ないけど おすそ分けもできないわけ 呼吸なわけ まばたきなわけ やらなきゃ…

遁走

おかあさん 川にひとが下りたよ 瞳がほてる 間引いたのは かわら石 銀々と流れる水面に 日焼けのざらし 遡上して 十五キロ なみ縫いの果ては サンダルにからむ 泥 ちいさな水たまりだった わき水におよぶ収斂 酒盛りに興じる連隊 テッポウとテッポウ玉の狭間…

レッドハウス

目が覚めると 汗ばんだ毛布は冷たかった なみだの代わりに洟がたれる 蛇口がくち汚く罵る あたまを突っ込んでかき回す タオルを探るより先、怒声を投げつける あの頃のあたしは 体育館で授業よりピアノ 放課後は誰かと押し問答 歌が好きな子だった あたしが…

水母ゆれる

にんげんもどろどろだ と思っていた時期もありました いわゆるなま肉だ と知ったのは十二の夏でした 片瀬江の島 ひらひらと瞬きます 待て と言いつけた水夫が 四つ足のいすにまたがり はっはと こぎ出すのです ぷかぷか浮くのです ぶくぶく泡ぶくのです あそ…

お酒をやめて五年経った話

たばこをやめて一年半 おさけをやめて五年 を迎えることができました。 それが何、という人すみません。しかし当人としてはそれなりの感慨がありますので、少しだけ書かせてください。 おさけに関しては一度、五年目前で破ってしまいました。当時は講演や教…

仕事のメール対策の話

ここのところ体調が優れず、歩きに出かける元気もありません。今日は行こうと思っていても雨が降っていたり、ペースが掴みづらいところも梅雨時に乱れる原因なのかもしれません。 そんなこんなで家にいる時間が多く、何気なく日記を読み返していました。去年…

すずろありき

日傘のゆれる人いきれに 大社の白砂も かすみ入る 羽虫の群れを切りはらい 見なれぬ水行にまみえれば そぞろく流れは岩を縫い 水口の苔と すべりゆく木の葉に ならって たゆたう緑亀が 一目しては首をかしげた 人のつがいの指先を 墨たらしの鯉も 我先と吸い…

かもめ

あいつは海沿いに暮らしていた いつも風のように送り迎え みなとに抜ける三叉路のあたりで 夜がとりとめもなく波打つ いつしかこの部屋で 恥ずかしい日はドアの向こうで いってらっしゃいをしてから 二度目のおはようは会社にて 妹さんのお店に通い お母さん…

運のむだ遣い

なぜか二枚入りイギリスより Samsara Blues Experiment - Singata Mystic Queen

告白

スニーカーにジーンズを合わせて 黒い紙ぶくろを抱えて、私は探した。 彼はベージュのジャケットを着てくる。 顔は本の帯で確認していた。 数多ある空席の中、わざわざ 真ん中のテーブルを選ぶ意図が分からない。 こういう者です、と一枚のプリントを渡され…

使われる命

だったら やらねばと 食いぶちに成らなくても ともかく やってみよ 糞ほどの役立たずでも 背負うもの 背負った なら黙々 歩みを進めよ 世のため ひとのため とは気安く言わないものよ だれも かれも 共食いを経て生まれてきたの てめえの命から食わねば 隣人…

前夜の氾濫

両の耳 小指の先をねじ込んでは 瞼落ち 心の臓 血流の音に 呼吸をゆだねる 腕がらみ 牡丹を破くとさ みつが溢れるのよ 「ひとりで生きようとすれば 人を頼らざるを得なくなり ひとりで死のうとするなら 後始末を押しつけてしまう」 こんな思案が存外可笑しく…

晩蟬の

餌場なら事足りた 池袋の生ゴミの狭間 空き缶を投げられ 鶯谷を渡り 寝床は段ボール 焚き火であぶり 縄張りも追われて 南下してきたアゲハ蝶 季節外れのカブトムシ 虫どもは寄り添い 車上で暮らし 捕食をまねび 襦袢で流した神楽坂 夜な夜な羽をひけらかし …

風鈴流し

つっかけ もの干し 植木鉢 灰一色の露台には泥 黒目の際を泳いでゆく そうっと 畳に潜りこむ 死にゆく先は 無 ではなく同化のとちゅう おはよう かたつむりの稜線 に跨る子どもたち お天道様はきょう お隠れの様子 鎮まった高圧線の向こう みずの短冊が舌を…

いま五年ぶり

雨戸を開けることができました。 誰かに伝えたくて、すみません。

誕生日には泣かない

必ずメールをくれた 嬉しくないという時期は過ぎた 重圧とも感じなくなった 言うならば「申し訳ない」に尽きる 返事 と思うが文面に困る あれよあれよと夜になる 電話が鳴る 出られない もういちど鳴る 通話口が震える 「安否確認をした方が良いと思って」 …

やもめ通り

上手そうな鰻のにおいがする たまには重箱で食いたいものだ よだれが穿つ プロペラを回す 一斉に飛び立った椋鳥が 一滴の白糞を眼鏡に残していった 裸眼で見上げた薄陽は煌めく まぶたの裏で線虫があそぶ 真っ赤に吸えばいい ちくしょう こいつらみんな紫陽…

ワイドショウ

そのむかし男に投げ込まれた あの湿った桟橋から 梅雨の合間の射光がひりひり 水面はざらざら ブイは橙 あの観覧車は変わらない 何しに来たって 飯食いに来ただけ 面を見に来ただけ この肌荒れじゃ憶えちゃいないか 小銭がはぐれる 指先も痺れちまった もう…

お月さんに捧ぐ

お月さんには口がない それが運の尽きだった 握りしめていたボトルは あいにくの腰砕け 最後の一滴を振りかざす 濁った目玉がまつげを捻る お月さんが怒り出すと 瓦石の投てきが始まり お月さんが泣き出すと 青苔のしずくが鳴り響く おいと手を伸ばしても ご…

いつか庭先に吊るしてある

白膿の詰まる鉄骨の先に その器官はつながっている やさしく歪み 哀しく歪み 寝ている間にも歪んで あまつさえどこまでも犇めいていた 母は認知症の容に 父は後見人の容に 弟は保険屋の容に そして少女は母の容に 薄く柔いくちびる それは苦労をしていないか…

中央沿線

飲んでる意味ないよ 主治医が変わると途端にこれだ その物言いがとても嫌い 今までの歳月が無駄みたい 思いやりの嘘 思いやりのないほんと 売り言葉に買い言葉 口輪を外せば口論となる 心に無いことは言えないが こころは空っぽだと手を挙げてもいいか むか…

験を担ぐ

幸運に巡りあった、その喜びを忘れないために

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