生きてえのだ

花と虫と海、それとさんぽが好き。



目次  

現在のこと

ナイトバード

山野にけぶる朝もやの 雨のさざめに耳をそばだて 廊下をかけずる 喧噪を聞いてなお そっと 目をつむる エヴァ 聴いておくれ スカイツリーの雑踏に こころの芯子も死んだふり 浅草線 押上駅で並べた肩先 人あたりを起こせば スロープを這いずる 青くらげの腕…

弁天橋を渡れ

橋の中ほどまで歩いた みながみな 昼めしをかっ食らう砂浜 ──経過観察 そこには食性や習慣 受容と共感のしくみがあるはずだった 足音には用心深く耳を澄ます こちらに気づく者もあるのだ 大きな声、怒鳴った声 爆竹と花火が突如として 激しい頭痛を引き起こ…

鎌倉

小町通り 幾度も 学生たちに追い越された早朝 歩くのは相変わらず遅いが 高ぶりはどうにも収まらない 着付けや煎餅 そば屋に中華 ときおり開くシャッター越しには 暮らしが確かに立ちこめていた 八幡さまには松葉色の袴 竹ぼうきが玉砂利を鳴らす 読み終えた…

海はひとりに限る

海はひとりに限る 始発にゆられ 乗り換えにふるえて 波しぶきを被るのはひとりで十分 なまぐさい風にぶたれるのもひとり じろり と見られるのも 笑われるのもひとり 勝手のわるさを忘れて 砂にころぶのもひとりで十分 海はひとりに限る 若者を避ける日 波乗…

異音

母の支えるストライダー セダンがクラクションを鳴らした ちらほらと先走った梅の腹 父は黄色のボールをほうった 雨戸の向こうは、少々騒がしい こうして恐々、耳をふさげば おやゆびほどの存在力が こぶしほどには膨らんでゆくのだ わたしは既製品 純正だっ…

エナジー

萌芽 うっ血したつぼみが そこかしこ今にも こぼれてしまうの ブルーチーズをほおばり ティースプーンを舐めとり 鼻腔またたくフレーズに 節をつけては照れてしまうの 屋根でふたをし 壁で目隠し ひとすくいの宇宙は 檻のない、動物園なの 一心に爪を研ぎ 噛…

表参道

もの知らずのわたしは 図らずも柄杓の作法を教わる 参道では迷子のみどり亀が あゝとあくびをしていた 靴音がこつこつと澄み渡り 波しぶきに髪もこわばり 交わした言葉は ただただ、しょっぱい いったい何度 わたし達は出会ってきた 約束はしない約束 ゆえに…

輪郭

自分の写真は無いでしょ と撮られた姿を 何度も なんども見かえす Origa - Счастливое Лето

朝焼けを待つ 体躯を折る 少年は律儀な三角定規 しける波音のすき間で 二歩三歩と少女が駆け寄る 風など跨いでお行きなさい うみねこなら雲をつつく こぼれ落ちるたまごの半熟 諦めなよ 他人になるのは 海岸線に霞みゆく足あと そっと 橋のたもとで見送る わ…

一日

満ちてしまえば 欠けてゆき 欠けてしまえば 満ちてゆく お月さんに倣い わたしは丸く ただ惜しみなく 全うしてゆく

しあわせ

買えるなら買っとけ 胸を張って買っとけ わたしの顔など忘れて ふとんの中に捨ておけ いつだって季節は 米研ぎに沁み入り ひたす左手には かじかんだあかぎれ あなたはどれ? わたしならこれ 河原で挫くついで 暮らしよ、勢い転がれ 買えるなら買っとけ 買え…

石蕗

街道、澄みわたる耳たぶに 再度、ニコラヒッチコックを想う みぞれを引き連れ あごをうずめて歩いた さんざめいた腹の 虫は据わりを取り戻し 八六のリズムで 因果律をかじる 吐いても毒 飲んでも毒 なら何遍でも 唱えてやる 笑うことではないが 泣くほどでも…

茶屋にて

尾根は遠くほほを赤らめ 朝方 湿ったあくびをする 道ばたに染みついた楓のかげを きょうも変わらず けんけんぱ 不思議そうに 見つめる少女は きっと 鼻筋の通った美人さんになる ごめんください くちなしの木の下 自慢の茶菓子をいただく 煎茶の甘味に 在り…

縒り糸

鈴鳴りの空は 錨のすき間にも這いずり いっそう青らしくなった 有象無象 こぞって見上げて みんな、みんな、刺し網のなか 獲物は暮らしに帰るべく 水しぶきをあげた 男も唸りをあげる 飛び散る うろこに息子は酔った 女は岬で歌を納め 港へと向かう 甲板に立…

耽溺

草木よ 花よ わたしはあなたの友だち 風に揺られたくらいで そんなそっぽを向かないで おしべとめしべ ことばを虫たちに運ばせ おしゃべりに耽りましょう 冷たい雨もそっと 小指の腹で やわらかに拭いましょう ゆめを見たのよ 蜘蛛の糸をつたい わかい椛につ…

宣告

ありのまま あるがままを受け入れて 怖れるものは何も無いと言っておく みずからの質を知ればこそ 父 母 きょうだいに悪因 悪果はないのだと言っておく 家中構成 ぶち壊れるのは避けがたい だからこそ知った再会の味わい みずから道を切り開く そんな生き様…

斜陽

感情不在、 と言われるキモチにも 名前を。

一輪

耳たぶをたれ お天道様をゆび指し ただ一心に 花弁の わたりを広げた 想いは風に 気ままな虫に託して ただ無心に 夕日の うなじに見とれた 土のけむり 枝切りの響きに交じり ひとりきりなら よくしゃべる 心耳を研ぐのは ひとの寝息が嵩むころ 土手の継ぎ目 …

朝が来た

コラア コラアと鴉さん すみません こんな朝から ゴウシュ ゴウシュと ろ過水槽も起き抜け 唸ります 目覚めが悪いのでしょうか 呼吸のすきまを狙って 無遠慮に 頬をつねっていきます 慰める とは どういう理屈の動作か くちを開けたり 閉めたり 日々テストを…

生き写し

ひび入る虚空に散った 木漏れ日の刺しこむ まばゆさに おたがい 目をつむっていた ファインダーに映った あんたの白髪 目を合わすなら いま このとき にじむ画に はきと知る 僅か もうあと 僅か 露光の足りぬ 日曜の夕刻 池に餌をまく 親子がいそぎ 帰り支度…

俎橋

水面を舐める とんぼの番い 負けじと跳ねる あめんぼのつま先 まばたき知らずの 五葉松の下 ふつふつと鳴く 錦の鯉よ おまえの目には 嘘が無い わたしは慧眼と呼ばれた 血も涙も干しあげ ちちを切り裂く 背中に広く 根深く 痣が染みつく 無言なればこそ ひと…

受信

団地を組み立てる人影が見えた 組んず解れつのパイプが群れ 踏んで荒らした痕を見上げて 痩せ細った月が ひじをつく えぐる桟橋のうえで がどがど のっつ ばゆばゆ けん 異国のことばが跳びまわる 絶えず切り詰め 追い詰める 向こう見ずは高台にのぼった 両…

すずりの

いりひに すみをすり こりをほぐす ふでのさき orionhanako.hateblo.jp

虫の一分

下校中のランドセルが にじいろのボールを蹴飛ばす こおろぎの腹をさする 男子の興味はどこにある 消し忘れた自転車のライト ふしくれだったアスファルトに タングル もしくは相合傘が重なる よく見えた 見えてしまった 空洞 打擲 ひんやりと肌に触れる 濡れ…

果托

コトの実は白く 細長い 腕をたらし 枝分かれし 先端に ひとの数ほどの マコトの実を揺らし 口をかたく結び 眼を閉じ ただ座する 一輪のもとに 吹きこぼれる群生を湛え 燃ゆる むき出しの野性に 皆 一様に顔を背ける Emel Mathlouthi - Houdou On (Calm)

着信

笑われた むかし話の切れ端さえ笑ってくれた 笑われるのは交じわった証だと思う 交わらない視線のさきに同じ年月を祝う 野郎は見下すものには激しく突っかかる 守られる理由も分からず守られる日々に 好きになったものはずっと好きだからいまも解約せずにポ…

安心

たいていは無口で ちんもくを苦とせず ひとを食い物にしない だからちゃぷちゃぷ うちあける はにかむ さんぽっていうのは 神社と 橋と 街路樹と 草木と 花と 看板と 水辺の 鯉と 亀と鴨 階段をのぼり いつもの行き止まり 工事現場の陽だまり 公園沿いのとち…

おまえさん

どんどん がらがら えいえい やあと どうして こうも やかましいのか それとも こちらの やましさなのか おまえさん あんたのやさしさが どうにもこうにも かみきれねえや Devin Townsend - Ants

はなれや

雨がさくさく 芝をふむ 木立は白いフードをかぶる 猫じゃらしも泣いた髭 わたしは素足を投げだして 寝ころぶ 腫れた静寂 はり替えた障子が さもしい肢体を区切った 澄みわたる 隔たりのおんしょく 心拍は ピンクのらっぱ吹き ひらめきに従い ひとり納屋へ向…

アタッチ

ぽんたら ぽんたら めがねをうがつ 雨のつめ 濡れ落ち葉にマンホール 足回りが気になる 安全第一 フェンスのオレンジがこぞって 威嚇する 橋げたをじっと 見つめる わたしは欄干と似ている 有刺鉄線に とんぼが並び 淀んだみどりには森が映えた 合い言葉は …

食道

おうぎの棚田はもはや もぬけの殻だった 黄ばんだ木箱に はびこる執拗な チューブが脈打つ テラスの手すりには 小鳥が一羽 時計の針はいまだ おひるねの最中 小休そぞろに 飯で おびきだす 喧噪これみよがしに 品性 立つ瀬を誇示する 追いやられる くもる窓…

不都合な果肉

川縁はひとからげに 目もあらく梳かされ 残された水鳥と河口をめざす ポリタンクが漂う 彼岸花はにじむ 保冷ボックスがうっすら 囲いこむ かげろう はらはら 吠えるジャングルビート 跳ねる少年少女 これがどうにも毛深く 青いほおずきが深々 こうべを垂れた…

みのづくり

えっちら おっちら みのむしのブランコ いちぢくを食べて 小枝を立てて かたく 盛られたしじまに うねるからだに 砲弾ライトが光る この人たらしめ チャペルのうら庭で 皮膚感は べんじょ育ちの ひと垂らしの雨 きょう初めて 耳栓をさせて と言えたよ 静まる…

瓶底めがね

玄関先に落ちた 保険証券 顔も合わせず 契約は更改 身内なのに誠意が無い 二年前と吐く台詞は同じ 二十七はとうに越えた クラブ入りとは儚い夢だ くたばるどころか むしろ安寧 まだ 道半ば 歯がない 電話がない あれこれ無い モノねだりに疲れた すでに道半…

レイドバック

夕焼け小焼けの ヴァガボンド 遠い あこがれ ポーランド いななきは いつも 風のよう 鼾のように ねえあ ねえあ あねね あねね と ちり紙ロールをふり回す 暗い日の入り 帰り道 お澄ましをする ポートレイトも 茶色の花束も むぞうさな閉塞に沈まぬよう 欹て…

ぬくもり

日陰のすき間に 流される 青信号が点滅していく 風下に溶けだす 左手がしきりに 瞼をむずがる 水嵩が腰を上げ 水面はさめ肌に たれ込める枝舌は艶やかに シェリルの歌声はいつでも たおやかなハグであり それは 降り止まないものだった 当たり前のように わ…

青いゆびさき

道ばたに散らばった蝉は 踏まれていま 泣きだした 光を浴びて 風を感じる ただそれだけのことが 贅沢でもあり 大切でもある 雨のぬくもりは 知っているつもり でもすまない 頭の膜が閉じるのだ 崩れた膝が疼くのだ 悪く言わないでおくれ ただの事実なの だか…

雨傘

すれ違いざま 生きた と この目を見て 生きた と 死にたいではなく 死んでしまえでもなく たった一言 生きた と ただそこに 生きた と 弾かれてゆく 長雨の da capo Origa - 川よ、私の川よ

立身

脂っこい鮭の切り身に 海苔と納豆 好きではないのに 毎日毎日 食っている 読書は四冊つまみ食い 二行読んではすぐ戻る 聞こえる単語が横すべり 三人寄れば黙り込む 潜らない思考 埋まらない齟齬 先の見えない治療に 不毛とも言えない 腕をふれ 足をさせ 目頭…

荒天

あずさ あさぎり でんしゃが好き くるま ボール お歌が好き ドラえもんが好き トーマスが好き わんわんはもちろん アンパンマンだって好き みんな大好き しまじろう ダイヤブロック お人形も好き 塗り絵が好き いたずらが好き そしてなにより ママのお迎えが…

享受

でもまあ体壊すたぐいのやつは 悔やむよ、いずれ 心にも裂け目が できるよ 歳を食えばたいがい 障害者よ 金なんか年中 むしられちゃうのさ 死別、生き別れ しょっちゅうだよ お涙ちょうだいは そろばん勘定になるよ 頭をぶつけて 視野欠損に気づき 無自覚な…

ひりひり

ちっか ちっか たちこ ちっか ちっか たちこ ちっか たちこん 銅メダルがこじあけた こころ

どこか嬌声

落陽をなじる瓦屋根 メガネの縁には黒い種 歩けるようになって半年ぐらいか 気前よく変わる街並みに 浮いて浮かんで、消える アポクリン腺を開きませんか てんであきらめやしない おでこの張った男よ 誰ぞある 吐く息もなまぐさい 顔を肩からぶる下げ 追いつ…

へのへのもへじ

ちかちか瞬く あたまの輪っか 近ごろようやく 風を招いた ぬめりをなぞる しかくい湿地 沼が 大きな 口 を開ける 日が暮れると 木の実を砕く 打ち損じては ゆびさき挫く ひょっとして 聞こえますか 沈む あぶくの囁きが 水面に映える つむぎは大島 肉は 小さ…

ツギハギ

まち針を 打って打っては 縫い続け 縫って縫っては 打ち返す くる日も くる日も 夜なべして いよいよ肩も凝ってゆく こころってやつは等しく 体液にまみれ 触れたことはないが これみよがしの拍動 縫い目の向こう 今だって、 こちらを窺う だからやはり 縫わ…

圧迫の舌

にがい耳を舐めて、生き延びると誓い しおりを挟んで飛び出した世界 この生涯に買い手はつくか その辺にもよくいるやつだ 袋小路の色使いに だれが強え、やべえとか マーキングだらけの街中において くすりを見直し、脳内整理 爪の垢まで力がみなぎる つかさ…

喃語ひびく

湿気の回らない換気扇に ひたいの汗も 玉とこぼれた もぞもぞと座ったまま たらふく太った 湿り気を抜く 手つなぎをがまんする代わり この髪の毛を弄って紛らわす 陽気が馴染んで 夢中で 走って 跳んで 手を振れば のども渇くというもの 突如 離陸体制に入っ…

祭囃子

てんつく てんつく ぴいひゃらり でんでん つくつく ぴいひゃらり ゆかた じんべい 昼花火 はっぴ 着流し つゆ払い ぱぱまま はな緒 赤ら顔 みこし 入れ墨 担ぎだこ 天突く 天突く ぴいひゃらり どんどん 突け突け ぴいひゃらり わた菓子 焼きめし 吹きもど…

不可逆の讃歌

もうさ どれにしようかな ができないわけ この先 歩道がなくなります この先 通り抜けできません そんな理由で引き返せないわけ でもさ あたしがやらなきゃ 誰もやらないわけ 申し訳ないけど おすそ分けもできないわけ 呼吸なわけ まばたきなわけ やらなきゃ…

遁走

おかあさん 川にひとが下りたよ 瞳がほてる 間引いたのは かわら石 銀々と流れる水面に 日焼けのざらし 遡上して 十五キロ なみ縫いの果ては サンダルにからむ 泥 ちいさな水たまりだった わき水におよぶ収斂 酒盛りに興じる連隊 テッポウとテッポウ玉の狭間…

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